何かヘン
何かヘン
みやうちふみこ
早朝、二番目の姉に電話で
今、寂しい気持ちを告げた
夕べもあまり眠れなくって
姉もほんとになんか
ヘンな気持ちね。
そのあと
今日はワクチン3回目の
接種なの。と言った。
その日わたしは
何年も蓄積してきた鉄鍋を磨いた
洗剤を入れ沸騰させて一晩おいた内側は
長年のうまみだったのだろうか 外側は
火にかけては こそぎ落として。
目覚めて眠っていたことに気づく
もすぐ正午。
12時20分ごろと聞いていたので
それから 空をながめていた。
曇ってきて残された一片の青が
湖のように沈んで見える
飛びながら烏が鳴いた
義姉にはもう会えないのだ
上半身の左右のくぼみが
重苦しくなって
東京の従妹の声をきく
知っているのか知らなかったのか
知らなかったのか知っていたのか
はじめて聞いたと驚かなかった。
回転焼きに似た
焼き菓子をおみやげに
かよちゃんが帰っきて
今日も おばさんたちに電話したの?と問うので
うううんと首をふった。
餡の味が抹茶の味と
解け合って美味。
昨夕、電話で聞いたタカシ君の声は
いつもより大きくて明るくって
悲しみがふきだしていた。
お風呂に入っていたら
また寂しくなって仕方なくって
大きな声で「瀬戸の花嫁」なんか
歌っていて、 何だかヘン
満月と星が瞬いて 凍えるような今宵に
祖母と父と母、兄を独り占めにして義姉はどんな顔をしているのだろうか
嫉妬に似た感情抱いて
2022年2月17日
苦しいわけ
苦しいわけ
みやうちふみこ
2月の朝 風にふかれて
宙みていたら 山鳩が鳴いた
義姉の面影が 浮かんでくる
あの雲 この雲 向こうの雲
とらやの最中が届いた
おいしそう でも
お腹がいっぱい
電話してもつながらないのでメールを書いた。
コロナワクチン3回目の予約完了。
野辺送りの果たせない苦しみ
なぜこんなに苦しいのか
わけわからなくなって
こんがらがっていたわけ
分かりました。
蔓延したコロナのせい
落ちつこう
2022、2.26
「あの音」
「あの音」 みやうちふみこ
高くなったり低くなったり
低くなったり高くなったり
五線譜の水たまりに
オタマジャクシいれたら
どんな風に泳ぐだろうか
フォルテッシシモ
フォルテッシモ
フォルテ
メゾフォルテ
ピアノ
ピアニッシシモ
ごく強くごく強く とても強く
強く強く やや強く
ごく弱くごく弱く とても弱く
弱く弱く やや弱く
その音が 背中から
体内に響いてくる
あの音と
見上げたら
はやぶさが
翼をすぼめ
猛スピードで
飛ぶ時のように
上空を南の方へ飛行
見えなくなって
写ったのはベランダの
白いひさしと青い空
夜が明けても
あの音としんどうの
止まない日
戦争を
知らない
君たちだから
甘い、考えに
酔って
いるの
よ!
さようなら。
空襲で家を焼かれたりけがをしたり死んだりしたのは個人的問題?「もうおしまい!」と君たちを信じて逝った母。「ははの詩」は永久(とわ)!
2021年05月28日記
灯台を観に
灯台を観に
みやうちふみこ
最寄り駅に降り立つと
閑散とした空間が
広がって いて
尋ねよう にも
みあたら ない
見わたすと
ターミナル
の、左てに
みえた、海
思わず
見とれていると
時間が過ぎていて
どこからともなく
あらわれた人たちと一緒に
バスに乗る。
シャッターで
仕切られた
街 は
あららしくて
寂しげで
真と
静か
そこにいつもの
街を
垣間
みながら
いつもの
初めての街を
あるいてみる。
若葉の光る高台
海の見渡せるところに
灯台は建っていて
トンビが一羽
海の 空高くを
弧を描くように
飛び
また
戻ってくる
あれはむ人とうで
あれは魚せん
あそこに見えるのがちば
むこうに見えるのがよこはま
指さしながら
女の人が
Oちゃんに
話している。
彩も形も
ベランダに咲いた
ほたるぶくろ
そっくりの
貝殻を見つけ
砂浜は小さくて
遊歩道に咲く
貝殻色の
花だいこんのたねを摘む。
ポケットにしまうと
いいの?と
Oちゃんは、
問う。
その時のまま
灯台はそこに建ち
汀(てい)線ははるか向こうに
きらきら揺らいだままだ
帰りは、赤い電車に乗った。
座った途端、Oちゃんが、 あら ふかふか、 と言った。
それから、駅で見た海 カッコよかったね、と言った。
黙っていたら、お母さん嫌いなんだ あの船、と、また Oちゃんが言った。
2021年6月6日 (2021年7月27日再推敲)
みやうちふみこ
反対周り
いつもと
反対に
歩きはじめて
見つけた
大きな切り株
太い根っこが
周りを囲んで
弔いしている
昨日もここに
あっのだろうか?
桜樹はそのままあった
夏、君は、
ここに
木陰を
作ってくれて
夏、一番に、
鳴いている蝉を見た樹
秋には、
やつでの様な葉が
赤い
落ち葉になって
踊っていた、ね
弔いを
祝うように
そこに
陽がさしても
もう
鳥たちの声は
聞こえてこない
道路に
黄金の
縁取りをするのは
風
吹かれて
葉が 舞う
木は
きれいな
木肌を
太陽にあずけて
新しい命を
育む 力を
蓄えはじめて
いるのだろうか
思いっきり万歳しながら 空を仰いだ
布団や
洗濯物が
お日様に向かって
歌っていると
あぁ いいなぁと
不安になるだろうか
反対周りをして 家に着いたら
牡蛎の旨煮の 匂いがしていた。
2021年03月20日推敲